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特許の演習授業

<出願書類を作ろう!>

私が担当している「知財学特論C(機械系特許の演習)」の授業では、前期は5月初旬、後期は11月初旬にMIPの院生さんに特許の出願書類(願書、明細書、図面、特許請求の範囲、要約書など)を作成して頂きます。

それも既存の発明ではなく、「自分で発明したもの」を条件としています。

したがって特許文献などの先行技術調査ができることが必要となりますし、特許電子図書館(IPDL)や国際特許分類(IPC)を知っていることが前提となります。

そこで、前期は4月、後期は10月に、明細書の構造、特許検索の方法、国際特許分類の内容などを講義しています。

その後、「自力で発明して、明細書を作り、所定の日までに提出しなさい」と院生さんたちを奈落の底に突き落とします。

学期が始まってからわずか1月後が出願書類の締切ですから、明細書の枚数の上限を設定しているとはいえ、かなり過酷な課題であると認識しています。

谷に突き落とすと言われる「ライオンの子育て」に似ていますね。(*^_^*)

一体どうなるでしょう?

<拒絶理由通知を作る月

多くの院生さんにとって生まれて初めての経験ですが、画期的な発明をされ、立派な明細書を作られます。

毎年、院生さんの才能に脱帽しています。

そこで、全員の出願書類に対して「拒絶理由通知」又は「特許査定」を起案することにしています。

したがって、5月と11月は一か月で二十数名分の拒絶理由通知書を起案するのが恒例行事となっています。

私にとって、審査官時代の感覚を思い出す貴重な月なのです。

この月は、院生さんの発明の本質は何かをずっと追いかけて考えます。出張先のホテルも、高速インターネット回線があることを必須条件としています。

この発明を追いかける審査の感覚を忘れてはいけないと自覚しているところです。

また、特許電子図書館(IPDL)とインターネット検索が主要な検索ツールとなりますので、IPDLの機能を定点観測していることとなります。

最近、かなり改善されました。何が改善されたのでしょうか。

<特許電子図書館(IPDL)>

一つ目は、特許の公報データを「文献単位」でダウンロード・印刷できるようになったことです。従来は、「1枚ずつ」しかダウンロード・印刷できませんでしたので、数十枚の公報を見ることが大変苦痛でした。

二つ目は、審査の経過情報とリンクが強化されたことです。

見ている特許の公報の発明が特許となったか、拒絶となったかなどが確認しやすくなりました。これも画期的です。

しかし正直な話、特許庁内の検索ツールに比べて検索精度はかなり落ちますので探しきれない引用文献があります。記憶している引用文献が出てこない苛立ちを感じるときがあります。

商用検索ツールとのバランスはあると思いますが、特許庁の審査負担を軽減するためには民間の検索精度を高める施策が必要と痛感する瞬間です。

無駄な出願をしないことは民間のメリットですし、特許とならない出願を審査しなくて済むことは特許庁のメリットだと思います。

本日(18日)の授業で、受講している院生全員に対してやっと拒絶理由通知を説明できました。(*^_^*)

ホッとする瞬間ですが、半年後に同じ状況となります。

外部から、特許電子図書館(IPDL)の更なる進化に心から期待しています。

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コメント

半年前に谷に突き落とされました(笑)

イベリア半島の某国に向かう飛行機の中でひとり唸りをあげながらあーでもないこーでもないと泣きながら仕上げた事が今でもたまに夢に見ます(本当)。

今でも「本当にやり切れたか?」と振り返ること多々ですけどね。

じゃもう1回やってみる?…「んー、進歩ないなぁ」とか言われそうで(そういう意味でまた谷に突き落とされ)

投稿: yama_G | 2006年11月19日 (日) 08時39分

yama_G様

前期の授業、お疲れ様でした。<(_ _)>
ホント、海外出張が多くて大変でしたね。

いまだに夢に見るなんて・・・。
教育効果がありましたね。(*^_^*)

ところで、海外出張先からメールでレポート提出される院生さんには共通点があります。
「現地時間では締切に間に合っています」と強く主張される点です。(*^_^*)

確信犯でしょうが、嬉しく受領します。
時差と仕事とレポートと同時に戦うことは大変なことですよね。<(_ _)>

投稿: 生越由美 | 2006年11月19日 (日) 19時13分

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