「ブランド農産物」
<いんげん、いちご、さくらんぼ>
これらのブランド農産物の共通点は何でしょう?
それは、「育成者権(植物の新品種に対する権利)」が侵害された(疑いがある)ことです。
いきなり暗い話で申し訳ありません。<(_ _)>
<いんげん>
北海道が育成した白あん用の「いんげん(雪手亡)」は、1995年に、品種登録されました。
北海道は海外ライセンスをしなかったにも拘らず、中国、カナダで栽培されたのです。
輸入を止めるため、1999年からDNAで識別できるように技術開発に着手し、2002年に中国産のいんげんが「雪手亡」と公表しました。
ブランド野菜を守るために、遺伝子技術の開発競争になっています。
<北海道立中央農業試験所 作物研究部 畑作科ホームページ http://www.agri.pref.hokkaido.jp/chuo/kaihatsu/hatasaku/hata1/hinshu/yukitebou.htm から転載>
<いちご>
韓国人の一人当たりの年間いちご消費量は日本人の約2.5倍だそうです。いちごが大好きな国民なのですね。
しかし残念ながら、その韓国で「レッドパール(権利者:個人)」や「とちおとめ(権利者:栃木県)」が許可無く栽培されました。ただし、レッドパールについては、韓国の一部の者には許諾していました。
これには事情があります。
韓国は2002年に「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)」に加盟しました。現在、品目ごとにロイヤリティーの支払い開始時期を決めています。
「いちご」については2004年から支払い開始を予定していましたが、2006年に延期。さらに2006年9月25日、韓国の農林部は2009年の導入を表明したと中央日報の日本語サイトが紹介しています。
現在、韓国内で消費される分には日本はロイヤリティーを要求できませんが、日本への輸出は2003年に改正された「関税定率法」により税関で止めることができます。
つまり韓国のメリットは国内で消費されるいちごに対するロイヤリティーの支払いが不要なこと。デメリットは日本への輸出ができず韓国の農家の売り上げが減少することです。
<さくらんぼ>
2005年11月16日、さくらんぼの「紅秀峰(べにしゅうほう)」の苗が海外へ不法に持ち出されたため、山形県は種苗法に基づき、オーストラリア人を刑事告訴しました。迅速で、立派な対応だと思います。
「紅秀峰」は、山形県が1991年に品種登録を行ったもので、「佐藤錦」よりもキロ単価が高い高級品種です。
(やまがたアグリネット http://agrin.jp/cgi/guest/menu.cgi?p=c:48 から転載 )
種苗を持ち出したのは、タスマニア州在住のオーストラリア人ほか1名。1999年、山形県内の農家がこの2名に紅秀峰の枝(穂木)を渡したそうです。
http://www.pref.yamagata.jp/governor/press_conference/list/2005/051116_g.html
本日の「知財政策」の授業では、山形県の農林水産部にヒアリングに行かれたAさんから報告して頂きます。
今、山形新幹線で東京に戻っている途中と連絡がありました。
後程、皆様にも追伸しますね。(*^_^*)
<追 伸>
事件の経緯及びその後の山形県農林水産部の取り組みを報告して戴きました。
農林業従事者を始め、県民向けに種苗法の重要性を普及・啓発するパンフレットを発行しているそうです。
「農作物品種は産地の財産 ルールを守って、登録品種を活用しましょう!!」は、とても分かりやすいパンフレットです。
たくさんの方に読んでいただきたいですね。(*^_^*)
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コメント
山形県に取材に行った理科大MIPの学生です。
本件は、日本に輸出される前にオーストラリアの農家による紅秀峰の輸出計画がグルメ雑誌に掲載され、それを県が知ることができたため日本への流入をとめることができましたが、これはレアケース。
普通は、物が入ってから「どうも怪しい」と気づくわけで、しかもDNA鑑定などにより識別できるまでは輸入が止まらないのが実情ですが、そうなってからではもう遅い。
一度流れた品種は止めることができません。これは技術や著作物も同様です。
投稿: MIP学生 | 2006年12月13日 (水) 17時19分