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KSR事件・米国最高裁判決

<米国最高裁の夏休み>

たまには堅い判決のお話を・・・。<(_ _)>

米国・最高裁判所は7~10月は夏休みであるためか、休み前に「グロクスター事件」などの大物判決を言い渡す傾向があるように思います。(*^_^*)

したがいまして、この時期に原稿依頼があると煩雑に米国判決のスケジュールに合わせてウォッチングしています。大きく事態が動くことがあるためです。

過去、何度か泣かされました。<(_ _)>

<KSR事件:KSR International Co. v. Teleflex Inc., U.S., No.04-1350>

2007年4月30日、「非自明性」に関する待望の判決が言い渡されました。KSR事件の最高裁判決です。

KSR事件とは、2002年にミシガン東部地区連邦地裁に提訴された「自動車用の調整ペダルアセンブリ」に関する特許(6,237,565B1)侵害訴訟で、原告はTeleflex Inc.(米国)で、被告はKSR International Co.(カナダ)です。

被告のKSRは、本件特許は非自明性の要件を欠くと主張して、特許無効を求めて略式判決(summary judgment)を地裁に申し立てました。

地裁は「本件特許は、調整ペダルアセンブリと位置センサーという2つの公知技術の自明な組み合わせ」と判断しました。

そこで、特許権を否定された原告TeleflexはCAFC(連邦巡回控訴裁判所:特許などを専門にする米国の高等裁判所)に控訴しました。

2005年1月6日、CAFCは「地裁が採用した自明性の判断基準は誤り」と原判決を取り消しました。

そこで、2005年4月6日、被告KSRは「CAFCの自明性に関する判断基準」に異議があると最高裁に上告請求し、上告受理されました(受理されなければ判決は出ません)。

そして、2007年4月30日にKSR事件の米国連邦最高裁判決が出され、CAFCが行ってきたTSMテストの適用は、特許法及び最高裁判決に抵触するとされました。

<TSMテスト:teaching, suggestion, or motivation test >

争点となったCAFCの判断基準である「TSMテスト」とは何でしょう?(*^_^*)

自明性を理由として特許無効とするには、先行技術中に教示されている事項から、特許クレームで特定された組み合わせを「教示(teaching)」、「示唆(suggestion)」、「動機付け(motivation)」する記載が存在していなければならないという考え方です。

つまり、公知技術を組み合わせる教示、示唆や動機が開示されていれば、公知技術に基づきクレームは自明であると判断するものです。Graham v. John Deere Co.判決で示されました。

今回の米国最高裁判決は「自明性の判断においては、「特許権者」にとって組み合わせが自明か否かではなく、「当業者」にとって自明か否かで判断しなければならない」としました。

また、「公報や特許に記載された事項を重要視しすぎてはならず、例えば科学文献などによりその方向性を把握することができる。そして、当該分野で知られているか、特許に記載されている必要性や課題に基づいて、組み合わせができるか否かを判断しなければならない」と判示しました。

さらに、「発明を取り巻く知的探索や最近の技術の多様性を見ると、(自明性に関する)分析を制限することは適切ではない。多くの分野において、手法や要素の組み合わせについて、その自明性を問う議論はほとんど行われていないし、開発の方向性を決めるのは、論文よりもニーズである場合が多いだろう」とも最高裁はコメントしました。

今後、米国の連邦地方裁判所や連邦巡回控訴裁判所の判決は変化すると予想されます。注目点ですね。(*^_^*)

<日本の進歩性への影響>

私見を申し上げれば、日本の進歩性の審査基準はもともと「当業者」に基づくものですから、今回のKSR事件・米国最高裁判決と大きな齟齬はないと思います。

反対に、先行技術に教示、示唆、動機付けが書いていないにも関わらず「進歩性」を否定する場合は、市場のニーズや開発動向など、出願時点における当業者の技術的認識を明らかに示せという指摘とも考えられます。

ユーザーからは、米国は甘すぎる、日本は少し厳しすぎるという声も聞こえます。世界特許の構築に向け、「非自明性と進歩性」の判断はますます重要になっています。

今後の世界中の判決が待たれますね。(*^_^*)

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