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「20%ルール」のススメ

<物理学会会長の先見性>

7月16日(月)の讀賣新聞によると、坂東昌子日本物理学会会長が、「若手の研究者は、仕事時間の20%を自由に使って好きな研究を」という提言を発表するそうです。

狙いは、ポスドクのの視野と発想力を広げ、企業など幅広い分野で活躍させること。良い成果が出ることを祈っています。<(_ _)>

また、同紙によると、「20%ルール」は米企業「グーグル」などが取り入れて、社員のやる気を引き出しているが、学会が呼びかけるのは異例だそうです。坂東昌子会長の先見性に脱帽です。(*^_^*)

<3Mのイノベーションの秘密>

私は講演会で、「ポストイット」を発明した3Mの15%ルールをよく紹介します。3Mには、執務時間の15%を自分の好きな研究に使ってもよいとする「15%ルール」という不文律があるそうです。

イノベーションを起こし続ける企業はどこか面白いですね。o(^-^)o

詳細は、住友スリーエム株式会社の製品開発物語に書いてありますので御覧下さいませ。<(_ _)>

4つの製品の開発秘話が書いてありますが、いずれも大変勉強になります。(*^_^*)

<自由な雰囲気と独創性>

なぜ、このニュースに興味を持ったのかというと、発明者やクリエーターを観察していると「自由」の中で生まれる創作物には素晴らしいものが多いと経験的に感じていたからです。

「自由」の保障は、研究者やクリエーターのコダワリを可能とするからかもしれません。<(_ _)>

特許庁時代、面接審査が大好きでした。直に発明者とお話できるのですから感動モノでした。o(^-^)o

面接審査が終わると、発明者に「いつどのような時に発明したのか?」と必ず伺うことにしていました。「内緒ですよ・・・」という切り出しで始まるお話でしたから、当然、個別の話は内緒です。<(_ _)>

しかし大まかに申し上げて自由に勝手に研究していた発明ほど独創性が高い傾向がありました。どうしてでしょうね?(@_@)

<イノベーションの要諦>

真面目な話、研究者やクリエーターは、「労働力」ではなく「知識」という生産財に転化しています。

イノベーションの要諦は研究者やクリエーターに適度な自由時間と資金を与えることと考えられます。<(_ _)>

「15%ルール」又は「20%ルール」を採用している日本企業は他にありませんか?(*^_^*)

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コメント

いつも有益な話題を提供いただきありがとうございます。

3Mの15%ルールとグーグルの20%ルールはどちらも有名なようですが両者で若干ニュアンスの違いがあるように思われます。

3Mは研究者に自由時間を与えることによって思わぬアイデアが創出されることが期待されているのに対して、グーグルは「ゼネラリストの育成」に就業時間の20%を半強制的に与えているとのことです。

坂東昌子氏の場合は、「ドクターのゼネラリスト化」或いは専門以外の領域の拡大が狙いにようですので後者に近い提言だと思いました。

前者の場合、アイデアが出た段階で、これを更に研究するのに研究費が必要になりますが、この研究費をどう手当てするのかが大きな問題となります。この研究費を含めて15%フリーということであれば素晴らしいルールだと思いますが・・・


投稿: 特許酔法師 | 2007年7月18日 (水) 11時40分

特許酔法師様

貴重なコメントありがとうございます。
大変勉強になりました。

御指摘の通り、新聞報道の限りでは「グーグル」に近い考え方かもしれません。

実際の研究現場は、3M型、グーグル型、研究費用含む型など、多種多様な研究環境でイノベーションの創出が競われていることでしょう。

成功例を対外的に公表される企業はまだまだ少ないようですが、魅力的な研究環境の公表は企業広報となり優れた研究者を集めることとなるでしょう。

研究者と研究環境がwinwinの関係となり、良いスパイラルに入られることを願っています。
決め手は経営者ですね。(*^_^*)

投稿: 生越由美 | 2007年7月18日 (水) 22時12分

皆様

研究者の方7名からほぼ同じ内容のメールを戴きましたので御紹介させていただきます。

◎職務発明の対価として報奨金をもらえるのも嬉しいが、会社のためになる発明をする度、20%、30%・・・100%と自由な研究の時間と予算をグレードアップしてくれるシステムが欲しい。

◎報奨金の魅力はある程度はあるが、研究者として一目置かれ、かつ自由に研究できる環境に移行したらやる気が出ると思う。

研究者への職務発明の条件として、功績に応じた自由な時間と研究費を段階的に認める制度は如何ですか?(*^_^*)

研究者はもちろん、企業のためになると思います。<(_ _)>

投稿: 生越由美 | 2007年7月19日 (木) 21時44分

生越先生

職務発明の報償の一つとして、一定割合の自由研究を認める方式に賛同します。そういう企業に就職したいです。
昔は「金と名誉」と言われましたが、今は「金と名誉と自由」と思います。お奨めの企業はありませんか?

投稿: 研究者志望 | 2007年7月20日 (金) 02時22分

いつも興味深く拝見させていただいております。
職務発明の功績に応じて自由な時間と研究費を認めるという制度、大いに賛成します。
 ただ、この場合でも、その功績評価を誰がどのように行なうか?、つまりその功績評価の『公正さ』をどう担保するか?が、(日本的風土の下では)依然として大きな問題点として残るように思います。
「独創的」←→得てして「和」「協調性」と相容れ難い。←→日本の社会(会社)は低評価を与える。
結果として、「独創的」な研究者こそは“自由な時間と研究費”も実際には手にし難い蓋然性が大。
 日本社会の特質に由来するこの問題を巧く解決することは、日本的風土の下で独創的研究を育む為には、依然として大きな課題として残るように思います。
(かつての特許法第35条は工夫することによりその解決策への一つの糸口になるかのようにも見えましたが、今は期待すべくもありませんね。)

投稿: MI生 | 2007年7月21日 (土) 16時24分

MI生様

コメントありがとうございます。

評価は重要ですね。特許庁の職務発明に関するアンケート調査によると研究者は評価方法に問題があると指摘しています。

職務発明(特許法第35条)問題は発明に対する評価とその対応問題です。全てのケースを報奨金で対応することを薦めるかのような35条の法設計は合理性が乏しいように思います。

ピーター・ドラッガーが指摘するように知的労働者への的確な対応が今後の課題です。私は「労働法」の大幅な改正か、「知識労働者法」の制定が必要と考えます。「ヒト」という生産財は「労働力」から「知識」へと転換しているからです。

投稿: 生越由美 | 2007年7月24日 (火) 02時14分

日本物理学会会長さんの20%ルールの原点は、どちらかと言えば3Mルールです。

ポスドクの希望に応じて、20%の自由時間を確保できるような環境整備が必要ということだと理解できます。(新聞記事の一面的な情報だけでは、正確にはわからないでしょうが。)
最近ではプロジェクト雇用型のポスドクが増え、フルタイムで雇われる場合、週5日中1日を他の研究に使うということは、原則できません。仮に出来るとしても、1日分の給与が出ない、ということになります。それを、20%別の活動に利用しても、フルタイム給与が支払われるように手当てする、ないしは、別の活動から20%分の給与が補填される仕組みが必要になります。
20%ルールは、物理学が基礎科学系である特徴を生かして、他分野(経済、金融、運送など)に物理学的に優位な特徴(数式化やシュミレーションなど)を持ち込むことで新しい分野を開拓し、社会に新しいニーズを生み出すといったイノベーション促進の観点が、当然あります。また、物理学に近い分野であっても、異なる分野での経験は往々にして新しい発見を生み出します。これらがイノベーション創出の観点からの20%ルールの特徴でしょう。
しかし、このルールには同様に別の理由があります。キャリアパス多様化の観点です(採択された事業名を考慮すると)。それは、例えばポスドクが将来的に研究者だけではなく、教師になる選択肢を考えている場合、ポスドク期間中に何らかの教員経験を積んでおくことが、その後のキャリアに繋がります。そのためには、週5日中1日程度(20%)、教育経験ができるような環境が用意されていなくてはなりません。要は、ポスドクの将来の希望に配慮した上で(そのためには雇用主もポスドクを理解する必要あり)、キャリアの選択肢の幅を確保することにあります。これは、ポスドクよりも、まずポスドクの雇用主に対して、多様なキャリアパスの可能性を考慮した人材養成をすることを促している提案と理解するほうが、より正確と思われます。

投稿: イノベ | 2007年9月 4日 (火) 00時01分

イノベ様

貴重な情報、ありがとうございます。
日本物理学会が提案されている20%ルールについて、より正確に深く理解できました。
多様なキャリアパスの構築が期待されますね。

投稿: 生越由美 | 2007年9月 5日 (水) 06時25分

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