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シカゴ・カブス商標判決

<夏は野球に関する商標事件が話題になる?>

2007年8月8日、夏場に相応しい野球に関する商標判決が知的財産高等裁判所から下されました。6月18日に口頭弁論が終結したアメリカの大リーグ球団「シカゴ・カブス」の商標登録を巡る事件です。

・・・というのは、「阪神優勝」商標事件も2003年7~8月の夏に世間を騒がしたからです。経緯はこちらのサイトが詳しいです。

リーグ優勝が視野に入り始めるので夏場は野球事件の注目度は高いようですね。(*^_^*)

<大きく報道された審決取消判決>

新聞各社が一斉に審決取消のニュースを伝えています。

カブス(CUBS)というロゴを、特許庁は頭文字「C」で囲んだものに「スイス・ユニオン銀行の商標であるUBS(ユービーエス)を組み込んだものでありUBS商標と類似する、として大リーグ側の商標登録出願を拒絶しました。

ところが、「日本人選手の活躍により、国内でも大リーグの試合中継がされている。カブスはサミー・ソーサ選手が所属し、日本で開幕戦を行うなど、名称はよく知られている」と判決は指摘し、「ユービーエス」とは認識されないと判断しました。

メジャーリーグの「カブス(CUBS)」のロゴと外国の銀行の「UBS」のロゴを間違えることはないという知財高裁の判断の方が妥当だという趣旨の報道が多かったようですが、問題はここだけでしょうか。

<判決と商標制度に対する感想>

この事件に関する私の感想は以下の通りです。

①とても分かりやすい模範的な判決である。

知財高裁が分かりやすい判決を書かれるのは素晴らしいことと思います。

大昔の四重否定の判決文を読む苦痛から国民は開放されます。

②商標制度は正しく国民に理解されていない。

商標登録は「指定商品や指定役務(サービス)」内で有効なものということはほとんど国民に知られていません。

特許庁は、同じような図形の「カブス(CUBS)というロゴを、頭文字「C」で囲んだもの」を数件、商標登録しています。

例えば、商標登録番号第1190753号は、昭和47年出願、昭和51年登録、商品及び役務の区分はスポーツバックやズボンつり)です。

ですからこの図形を全てUBSと対比して特許庁は拒絶しているわけではありません(特許庁の肩を持つわけではありませんが・・・)。

③国民にとって商標の審査基準には分かりにくい部分がある。

「指定商品や役務(サービス)」さえ国民にとって未知の世界ですし、審査基準も国民にとってややこしくて分かりにくいと思います。

地域ブランドの説明会でも御質問が多いところだと思います。

④裁判所と特許庁の判断手法が異なる?

今回の判決は指定商品・役務における周知性はもちろん、市場を混乱させなければOKというのが裁判所の考え方かもしれません。この意味で、商標の審査基準に一石を投じる判決かもしれません。

<特許庁の反論と裁判所の判断>

具体的に判決をみてみましょう。

特許庁の反論

指定商品・役務に限定して「CUBS」の周知性を検討しています(第10頁)。

「本願商標の指定商品又は指定役務は,第9類,第16類及び第41類の商品・役務であるところ,その指定する範囲は,商品については,「電話機」,「ラジオ受信機」,「カメラ」,「はがき」,「印刷物」,「ノートブック」,「ペン」,「鉛筆」,「鉛筆削り」,役務については,「教育情報の提供」,「娯楽情報の提供」等であって,それら商品・役務自体はメジャーリーグと密接な関係のある商品等とはいえない。

そうすると,本願商標の指定商品又は指定役務の主たる需要者は,子供から高齢者までの老若男女を含む一般的な消費者といえるから,必ずしもメジャーリーグに精通した者ないし興味を有する者に限られない。

すなわち,我が国においては,熱狂的なシカゴ・カブスファンならばともかくとして,一般のメジャーリーグファンにおいて,シカゴ・カブスのユニフォームのロゴは,到底知られているとはいえない。」

つまり特許庁は、「電話機」,「ラジオ受信機」,「カメラ」などの分野では、「シカゴ・カブス」はそれほど有名じゃない(周知性がない)と判断し、この分野で先に登録されている銀行であるUSBの商標と比較したのです。

裁判所の判断

「第5 当裁判所の判断」において、冒頭で「CUBS」の周知性を認めた次の段階で(第19頁)、

「引用商標2ないし4の商標権者であるUBS社は,本願商標の出願人である原告に対して,原告が本願商標を第9類,第16類及び第41類の商品について登録することに同意していること(甲54)に照らすならば,UBS社も,本願商標と引用商標とは,互いに出所の混同を来さないと認識,理解しているものと推認される。」

裁判所は先に同じ指定商品で商標登録されているUBSも問題ないと言っているし、この分野で混同も来さないと判断したのです。

<今回申し上げたかったこと>

特許庁は「電話機」などの指定商品や指定役務に限定して、「CBUS」が有名かどうか(周知性)を検討しました。

裁判所は「CUBS」の一般的な周知性を認定した後、「電話機」などの同じ指定商品や役務における他の商標との混同を検討しました。

判断の基準と手順が異なったのです(重要な判事事項です)。

ですから、単に米大リーグ球団「シカゴ・カブス」が有名か否かについて、特許庁と知財高裁の判断が異なったという単純な判決ではないのです。

それにしても新聞各社に取り上げられ、国民にとって商標制度が身近になってきたのは素晴らしいことですね。(*^_^*)

これからもドンドン報道していただきたいと心から願います。<(_ _)>

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コメント

生越先生
下記のサイトで紹介されていました。
思わず嬉しくなりました。
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http://blog.mag2.com/m/log/0000005669/108858712.html

生越由美さんの記事を読んで、専門家が発信することへの感謝をあらてめて感じる。

・「シカゴ・カブス商標判決」
(「知財(知的財産)」ってなあに?、2007-08-11)
http://ogose.air-nifty.com/blog/2007/08/post_f563.html

主要な判決がすぐに電子化され、そこにこういった専門家の発言が結びつく仕組みをつくっていきたいものだ。

投稿: 院生100 | 2007年11月 4日 (日) 17時45分

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